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お中元の季節になると憂鬱な気分になってしまう、などといった人もいるのではないでしょうか。お中元は誰に贈ればよいのか、いくらくらいの品を贈ればよいのかなど、いろいろと考えなければならず、お金も手間もかかるものだからです。

そもそも、なぜお中元に贈り物をするようになったのでしょうか。お中元はいつから始まったのか、何のために贈り物をするのか、日本のお中元文化について解説します。

お中元の由来や日本の贈り物文化について知ることで、お中元に対する想いが少し変わるかもしれません。

日本のお中元は、中国の年中行事である「盂蘭盆会」が由来

今ではすっかり日本の文化として定着しているお中元ですが、もともとは中国から伝わってきたものです。お中元の由来は、中国の「盂蘭盆会(うらぼんえ)」という行事です。

盂蘭盆会とは

盂蘭盆会とはお盆のことで、親族などが集まり先祖を供養する仏教行事です。日本に盂蘭盆会が伝わったのが7世紀頃と言われています。

宮中の行事として始まった盂蘭盆会は毎年の恒例行事となり、次第に貴族社会、武家社会へと広がっていきました。一般的に広まったのは鎌倉時代とされ、お盆にはお供え物をして供養をするようになったと言われています。

お盆に贈り物をするようになったのは、江戸時代頃からです。お盆や年末は商人の清算時期で、清算をする際にお得意様などに贈り物も一緒に持参する風習ができ、明治以降は、お世話になった人へも贈り物をするようになったとされています。

お中元と言うのはなぜ?

中元というのは中国の宗教である道教の行事の一つで、旧暦の7月15日にあたります。中元は地官赦罪大帝という神様の誕生日で、お供えをしてお祝いをする日です。

この中元が盂蘭盆会と結びつき「お中元」となったのです。日本では地域によってお中元の時期が異なります。

関東では主に7月15日を、関西では主に旧暦を由来とした8月15日をお中元としています。地域によってお中元の時期が異なる点を認識しておいてください。

お歳暮は日本古来の習慣

日本では年末になると「歳暮回り」が行われていました。手土産を持ってお世話になった人のところに行き、1年間の感謝の気持ちを伝える習慣です。

また、年末はお盆と同様、商人にとっては清算の時期です。お盆と同じように贈り物を持参し、お礼と来年もよろしくお願いしますという挨拶をする風習がありました。

それが現代まで引き継がれ、1年分の感謝の気持ちを贈り物とともに伝えるお歳暮が根付いたとされています。お歳暮は、1年の締めくくりに贈り物をして感謝の気持ちを伝えるだけでなく、来年への挨拶も含まれるため、お中元とお歳暮のどちらか一方にしたい場合は、お歳暮を贈った方がよいでしょう。

現代の中国でも「中元節」に霊魂を供養する祭事が行われている

お中元は中国が由来ではありますが、現代の中国で行われる中元節と日本のお中元は異なるものです。道教の年中行事・三元の一つである中元は中国では重要な行事で、霊魂を鎮める日とされています。

中国の中元節と日本のお中元との違い

日本では旧暦の7月15日の中元は馴染み深いものですが、中国の中元節は日本の中元とは違った意味があります。そもそも中元は三元の一つで、中元のほか、旧暦1月15日の上元と旧暦10月15日の下元があります。

上元節は天官大帝、下元節には水官大帝の神様の誕生日をお祝いする日です。天官大帝は「福をもたらす」神様、水官大帝は「厄を祓(はら)う」神様とされています。

中元節は「罪を赦(ゆる)す」神様である地官大帝の誕生日を祝う日です。地獄の帝や冥界の帝とも呼ばれる地官大帝の誕生日、旧暦の7月は地獄の門が開く日と言われています。

門が開けば悪霊をはじめとするさまざまな死者の霊が舞い戻ってきます。死者の魂や悪霊があたりをさまよう旧暦の7月は「鬼月」とも呼ばれ、軒先にお供えをして霊魂を供養するのです。

中元節の習慣

中元節では家や会社の前に、先祖と霊魂のために、たくさんの食べ物や飲み物をお供えします。線香を焚き、紙で作られたお金を燃やす風習や燈籠流しを行う習慣もあります。

また、中元節は先祖が帰ってくるだけでなく、悪霊もさまよっていると考えられているため、大きなイベントやおめでたい行事はタブーとされているのです。結婚や引っ越し、旅行などは避けるほか、夜の外出は控える、夜に洗濯物を干さないなどのNG行動もあります。

「日本の贈答文化」は神様へのお供え物が起源?

日本の贈り物文化の起源は、神様へのお供え物だと考えられています。農耕社会だった時代、天候は生活に大きな影響をもたらすものでした。

農作物に悪影響を与える天候を避け豊作を祈るため、供物をささげたことが贈答文化の始まりと言われています。

お供えを共食することが大切と考えられていた

収穫した米や野菜、果物はお供えをした後、それをみんなで分け合い食べることが重要と考えられていました。神様と人との共食、さらに周りの人みんなで食べることが関係性を深めていくうえで必要なこととされていたのです。

その場に居合わせない人には食料を贈ることで共食と同じことになるとされ、それが贈答文化を形成していったとされています。お中元の贈答品に食品が多いのも、共食といった考え方が原点のようです。

お中元やお歳暮は、大切にしたい「日本の風習」

現在ではお中元のやり取りを禁止している企業も増えています。確かに、気持ちのこもらない贈答習慣には意味がありません。

お中元やお歳暮は、お世話になった人に感謝の気持ちを伝えるものです。今後もよい関係を築いていきたいという思いを伝え、お互いの関係をよくする役割もあります。

お中元やお歳暮を贈るとこんなよいことが

「いつも助けてもらい感謝しています」「常に支えてくれてありがとう」など、感謝の気持ちを言葉にできないこともあるでしょう。お中元やお歳暮は、そういった気持ちを改めて伝えることができます。

水引やのしをつけて贈るなど、マナーを守って贈るお中元やお歳暮には、「きちんとしたお礼」の姿勢が表れます。遠く離れている人の健康を気遣い、また自分が元気でいることを伝えられるのもお中元やお歳暮のよいところです。

マナーを守って贈り物をすれば、「礼儀を知っている」と見直されるかも知れません。ギフトに関することで話題が弾んだり、話のきっかけができたりすることもあるでしょう。

相手のことを考えて選んだ贈り物は、受け取った人を喜ばせるに違いありません。お返しやお礼の手紙などから、より親交を深めることも可能です。

義務や習慣だけで贈るお中元は必要ないかもしれません。しかし、お中元やお歳暮の意味を理解し、気持ちのこもった贈り物をする日本の風習は大切にしていきたいものです。